イントロダクション
今回は、専用使用権
の問題です。
各戸にはベランダやバルコニーが付いています。1階の住宅には庭付きの住戸もあります。一見専有部分のように見えますが、実は「専用使用権が認められた共用部分」という位置づけなんです。
今回の問題のケースは少し複雑です。特定の区分所有者だけが使用できる駐車場という契約があるようです。
平成30年度 問 3 区分所有法
【問 3】
マンションの駐車場が区分所有者の共有に属する敷地上にあり、その駐車場の一部が分譲時の契約等で特定の区分所有者だけが使用できるものとして有償の専用使用権が設定されている場合、使用料を増額するために規約を変更する集会の決議及び特別の影響について、区分所有法及び民法(明治29年法律第89号)の規定並びに判例によれば、次のうち正しいものはどれか。
1、駐車場の使用が管理組合と専用使用権者との間の駐車場使用契約という形式を利用して行われている場合には、管理組合は、専用使用権者の承諾を得ずに規約又は集会の決議をもって、使用料を増額することはできない。
2、区分所有法第31条に規定されている特別の影響を及ぼすべきときに当たるのは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超える場合である。
3、使用料の増額について、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合であっても、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に特別の影響を及ぼすものとなるため、区分所有法第31条の規定により専用使用権者の承諾が必要となる。
4、専用使用権者が訴訟において使用料増額の効力を裁判で争っている場合であっても、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることができる。
ーマンション管理センター過去問よりー
解答
正しいものはどれか? ○ を見つけましょう。
これは、問題文が長く、何が書いてあるかよーく理解して答えましょう。
問題文をよく読むと、地権者若しくはマンションを建設するのに影響力のあった方が、駐車場の区画を他の居住者と区別して専用使用しているようです。さらに、その使用料が他の居住者の駐車場使用料よりも安く設定してあった場合。面白くありませんね。
さて、法律はどうなっているんでしょうか?
区分所有法 第 31条 (規約の設定、変更及び廃止)を見ておきましょう。左記の条項をクリックして内容を確認しておいてください。
1、駐車場の使用が管理組合と専用使用権者との間の駐車場使用契約という形式を利用して行われている場合には、管理組合は、専用使用権者の承諾を得ずに規約又は集会の決議をもって、使用料を増額することはできない。
区分所有法 第 31条の第1項に書いてある
「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」に当たるかどうかということです。
この場合、その変更した駐車場使用料が他の駐車場使用料と比べて、高かった場合これはひどい変更ですが、他の使用料と同額に値上げしたとしたら(それまで他と比べて安かった)それは、合理的ですね。状況がはっきり書いてないのでなんとも言えませんね。
それでも、他の使用料と同額にまで値上げすることはできます。 よって、 ✖ 。この選択肢は次の選択肢と関わりを持ってきます。
2、区分所有法第31条に規定されている特別の影響を及ぼすべきときに当たるのは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超える場合である。
最高裁の判例(平成10年10月30日)に下記判例があります。
一、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。
この判例に合致します。 この選択肢は ○ です。
3、使用料の増額について、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合であっても、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に特別の影響を及ぼすものとなるため、区分所有法第31条の規定により専用使用権者の承諾が必要となる。
選択肢 1、2の解釈に関連し、専用使用権者の承諾は必要ないと考えられます。 よって、 ✖ 。
4、専用使用権者が訴訟において使用料増額の効力を裁判で争っている場合であっても、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることができる。
係争中の裁判の判断を待たずに勝手に処置することはできません。 よって、 ✖ 。