イントロダクション

裁判。
いろいろな揉め事を裁判所は解決してくれます。

古くは江戸時代の大岡越前守の名裁きが有名。もっと昔の話になれば、黒澤明が描いた平安時代の検非違使が裁く侍殺しを描いた映画「羅生門」の話(原作は「藪の中」)などがありますね。現代ではドラマで裁判の様子をたくさん見ることができます。

マンションで騒音問題やペット、部屋を勝手に改造して商売に使う、反社会的な勢力の事務所にするなど規約違反をする居住者がいます。
管理費や修繕積立金を払わない人などもいます。そんな身勝手な人の行為は、周囲の住人だけでなくマンション中の人達が迷惑します。
そんな場合裁判に訴えてその部屋を競売にかけて、言い方は悪いけれど「追い出す」ことができるシステムがあります。

民事の裁判に訴えます。
民事の場合証拠調べや陳述などの法廷の手続きを「口頭弁論」と言い、刑事の場合では「公判」といいます。
口頭弁論の終結とは双方言うべきことを言い、証拠調べが終わったときに裁判官が「口頭弁論を集結します」と述べた時を言います。あとは判決を待つのみです。

同じマンション住む住人同士、軋轢なく暮らせるのが何よりですが、利害色々考え色々。人生色々ですね。

いろいろな問題にぶつかったとき「区分所有法」にはこう書いてあります。「民法」はこうです。と正確に言えるといいですね。

そのためにも勉強しましょう。

平成24年度マンション管理士試験 第9問です。

【問 9】
区分所有者の管理費の滞納が共同利益背反行為に該当する場合において、当該区分所有者を被告(以下「被告」という。として、管理者が、区分所有法第59条の区分所有権及び敷地利用権の競売(以下「競売」という。)を請求する場合の訴訟に関する次の記述のうち、区分所有法、民事訴訟法及び民事執行法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

 

 

1 競売の訴訟の口頭弁論終結後から競売開始までの間に、被告が区分所有権及び敷地利用権を第三者に譲渡した場合には、管理者は、その譲受人に対しては、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。

 

2 競売の請求の訴えにおいて、管理者は仮執行の申立てを行うことができ、当該訴訟において勝訴判決を得た場合、仮執行の宣言を付した判決を債務名義として、競売を行うことができる。

 

3 競売は、滞納管理費を回収するために行われる担保不動産競売であるので、区分所有権及び敷地利用権に設定されていた担保権が買受人に引き受けられることはない。

 

4 競売の目的である区分所有権及び敷地利用権にその価額を上回る優先債権がある場合において、競売による買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないときは、競売を行うことができない。

 

ーーーーマンション管理センター 過去問よりーーーー

 解答

を探す問題です。

区分所有法、民事訴訟法及び民事執行法の規定並びに判例によればと書いてありますから、選択肢はそれらの法律による判断ということになります。

まず、問題文にある「区分所有法第59」を見ておきましょう。(左の青字をクリックして確認してください)

 

 

1 競売の訴訟の口頭弁論終結後から競売開始までの間に、被告が区分所有権及び敷地利用権を第三者に譲渡した場合には、管理者は、その譲受人に対しては、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。

区分所有法第59条第1項を観てください。
「訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。」

と書いてありますが、1の選択肢には。

第三者に譲渡した場合」には、その譲受人(第三者)に対しては、当該訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。」

「競売を申し立てることはできない。」としています。

ここで、問題は条件です。

さて、口頭弁論終結後から競売開始の間に被告が区分所有権及び敷地利用権を第三者に譲渡した場合は競売請求できるのか?
第三者に申し立てできるか否か?

平成23年10月11日の最高裁の判決が出て「建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできない。」という判例がありました。

これは、「追い出すべき迷惑な人」がすでに所有権を「善意の第三者」に売り渡したのならば「善意の第三者」を追い出す必要がなくなったということです。

しかし、裏取引で「追い出すべき迷惑な人」が競売を避けるために知人に売ったことにする、というようなことはできません。
区分所有法59条の4項に「前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」ということになっています。

故にこの問題はです。第三者には申し立てできないのです。

 

 

2 競売の請求の訴えにおいて、管理者は仮執行の申立てを行うことができ、当該訴訟において勝訴判決を得た場合、仮執行の宣言を付した判決を債務名義として、競売を行うことができる。

民事執行法に難しいことが書いてありその中に回答がありますが、膨大な文章になってしまいますので、ここでは「判決を債務名義として、競売を行うことができる。」という部分に注目して解答を見つけましょう。

日本の裁判制度は三審制ですので、下級審で判決が出ても確定するとは限りません。確定前に競売などしてしまうと、相手が不服で控訴、上告する場合があります。上級審で別判決が出た場合に権利関係など修復が困難になります。

よって、判決を債務名義として競売を行うことができるというのは間違いです。です。

 

 

3 競売は、滞納管理費を回収するために行われる担保不動産競売であるので、区分所有権及び敷地利用権に設定されていた担保権が買受人に引き受けられることはない。

買受人に引き継がれる担保権もあるので、「担保権が買受人に引き受けられることはない。」とは言い切れない。

 

 

4 競売の目的である区分所有権及び敷地利用権にその価額を上回る優先債権がある場合において、競売による買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないときは、競売を行うことができない。

「競売による買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たない」場合でも競売ができないわけではない。

競売をしても、売却代金が手続費用や債権額に満たないことも多くあります。

 

2、3、4の選択肢は簡単に書いていますが、区分所有法、民事訴訟法及び民事執行法をしっかり理解していないと回答できません。今後の判例などにより変わってくる場合もあります。しっかり勉強が必要です。

 

解答は 1 です。

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