イントロダクション
我々は地震国 日本に住んでいます。昔から数々の震災に見舞われました。
度重なる十勝地震、1983年の日本海中部地震、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災。調べればいくらでも出てきそうです。
小さな地震なら毎日です。
マンションの歴史の中で最大のエポックになったのが1995年の阪神淡路大震災でした。
マンションが倒壊して住む場所がなくなった被災者の方が多くいらっしゃいました。そのときにはまだ法の整備ができておらず、建て替え再建に大変苦労なさったようです。
建て替え要件を引き下げたり、新しい法律が多くできました。
1962年(昭和37年)に制定された区分所有法も時代や災害に合わせてその都度改正されています。
1983年(昭和58年)の大改正のあと、1995年の阪神淡路大震災の経験を踏まえ2002年(平成14年)に大きく改正されました。
マンション管理士試験 平成24年度 第10問
【問 10 】
Aマンションが、甲地及び乙地の2筆にまたがって所在していたが、地震によってAの一部が滅失し、乙地上には建物が所在しなくなった。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、甲地及び乙地は、Aの区分所有者全員の共有に属するものとする。
1、乙地については、民法の共有物の管理又は変更に関する規定は適用されず、規約でAの敷地と定められたものとみなされ、区分所有法の共用部分の管理又は変更に関する規定が準用される。
2、乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議により、規約に別段の定めをしない限り、区分所有者全員で、乙地に第三者のために駐車場として賃借権を設定することはできない。
3、乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各4分離して以上の多数の決議により、Aの敷地と定められたものとみなされた規約を廃止し、Aの区分所有者全員の同意を得て、乙地を売却することができる。
4、乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議により、規約に別段の定めをすれば、Aの区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る乙地の敷地利用権を分離して処分することができる。
ーマンション管理センター 過去問よりー
解答
✖を探す問題です。
1、 乙地については、民法の共有物の管理又は変更に関する規定は適用されず、規約でAの敷地と定められたものとみなされ、区分所有法の共用部分の管理又は変更に関する規定が準用される。
区分所有法 第5条 を読んでください。(左記クリックで見られます)
Aマンションが、甲地及び乙地の2筆にまたがって所在していたが、地震によってAの一部が滅失し、乙地上には建物が所在しなくなった。
という前提は上記区分所有法第5条にある通り、規約で建物の敷地と定められたものとみなす。⇨みなし規約敷地。
民法の共有物の管理又は変更に関する規定とは?
共有者が共有物に対してできる行為は
民法251条及び252条に規定があります。(左記条項クリックで内容確認できます)
管理行為:目的物を利用改良する行為。持ち分価格の過半数の同意でおこなえる。 |
保存行為:財産の価値を現状のまま維持する行為。 各共有者が単独で行える。 |
変更行為:共有物を物理的に変更する行為。 |
これが民法の規定。
区分所有法は民法の特別法の位置にあります。区分所有法はマンションという新しい(もう、新しくはないが、民法の成立時に比べて)形態に特化した法律なので民法に優先するところが多い。
よって、1は○ということです。
2、 乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各 4分の3以上の多数の決議により、規約に別段の定めをしない限り、区分所有者全員で、乙地に第三者のために駐車場として賃借権を設定することはできない。
「区分所有者及び議決権の各 4分の3以上の多数の決議により、規約に別段の定めをしない限り」という条件が満たされない限りと書いてあります。
すでに乙地はみなし規約敷地なので、規約変更の必要はありません。普通決議(過半数)を持って賃借権を設定することができます。
よって、2は✖。
3 、乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各 4分の3 以上の多数の決議により、Aの敷地と定められたものとみなされた規約を廃止し、Aの区分所有者全員の同意を得て、乙地を売却することができる。
現在乙地はみなし規約敷地であるから、まずAマンションの敷地(みなし規約敷地)であることをやめるために規約の変更(区分所有者及び議決権の各 4分の3以上の多数の決議が必要)をしなくてはならない。
更に居住者全員の共有地の売却には全員の同意が必要。選択肢に書いてあるとおり。○。
4、 乙地について、集会において、区分所有者及び議決権の各 4分の3 以上の多数の決議により、規約に別段の定めをすれば、Aの区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る乙地の敷地利用権を分離して処分することができる。
みなし規約敷地となった土地と専有部を分離して処分することができるか?
(分離処分の禁止)区分所有法 第22条 (左記クリックで内容確認できます)
第1項に:
「ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と書いてあります。この設問のような事態のために加えた「ただし」書きでしょう。
区分所有者及び議決権の各 4分の3 以上の多数の決議により、規約に別段の定めをすれば、Aの区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る乙地の敷地利用権を分離して処分することができる。ということになります。
4は○。
よって、問10の答えは 2 です。