イントロダクション

ある男が宝くじに当たり3億円手に入れた、日本の銀行では不安と考え、スイス銀行まで飛行機に乗って預金に行った。

銀行で3億円入ったバッグを手にして行員にヒソヒソ声で「預金したい」と伝えた。

するとスイス人の行員は3億円分の米ドル札を見てニッコリ。

「心配いりませんよ。スイスでは貧乏は恥ではありませんよ。少額でも恥じることはありません」

と慰めた。スイス銀行では3億円程度は大金ではないらしい。

預金を断られなかっただけ良かったのかも。預金も一つの契約です。

令和 2年度 第  12問

〔問 12〕

Aは、甲マンションの1室を所有し、Aの子Bと同室に居住しているが、BがAから代理権を与えられていないにもかかわらず、Aの実印を押捺なつした委任状を作成し、Aの代理人と称して同室を第三者Cに売却する契約を締結し、登記も移転した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bが作成したAの委任状を真正なものとCが信じ、かつ信じたことに過失がないときには、当該売買契約は有効である。

2 当該売買契約締結後に、Aが死亡し、BがAを単独で相続した場合、売買契約は相続とともに当然有効となる。

3 Cが、マンションの同室をAC間の売買事情を知らないDに転売した場合、DがCの所有権登記を信じ、信じたことに過失もないときは、AはDに自らの権利を主張できない。

4 売買契約後にBに代理権がなかったことを知ったCが、Aに対し「7日以内に追認するかどうかを確答して欲しい」旨の催告をしたが、Aがその契約の内容を判断する能力があるにもかかわらず、その期間内に確答しなかったときは、その契約を追認したものとみなされる。

解答と解説

すべて、正しく見えてしまう。

1、Cは過失なく信じた。よって有効。

2、契約後に正式に相続したBとCの契約は有効。

契約書のイラスト(印鑑)

3、Cはもちろん無過失。Dも無過失。売買は有効。

4、追認要求を受けたAが無視。この場合追認したものとして契約は有効。

無過失に信じた契約は有効なのか?

では、契約に関する民法を見てゆきましょう。

A=マンション所有者
B=Aの子供で同居人。委任状をAの承諾なしに実印を押して作成。無権代理。
C=第三者のマンション購入者。善意・無過失。
D=転購入者C~D善意・無過失。

1 Bが作成したAの委任状を真正なものとCが信じ、かつ信じたことに過失がないときには、当該売買契約は有効である。

A(所有者)はこの場合全くこの売買に関与していない。A所有のマンションの一室であるからAの意志は必要。

・Bを代理とするという証明や事実。
・過去に代理にした事がある。

こういった事が全く無い場合(今回の事例)

表見代理(Aに帰属する責任が何らかの形である場合)が認められないので、有効ではない!

第113条【無権代理】 ① 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 

よって ❌。

 

2 当該売買契約締結後に、Aが死亡し、BがAを単独で相続した場合、売買契約は相続とともに当然有効となる。

B(無権代理)とC(善意・無過失)間で売買契約締結後にA(所有者)が死亡し、Bが単独相続した場合契約は当然有効である。?

民法第113条に本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じないとあり、本人が追認すれば有効になる。本人(A)の権限がBに移行したのだから、これはOK.

よって、 ◯ 

 

3 Cが、マンションの同室をAC間の売買事情を知らないDに転売した場合、DがCの所有権登記を信じ、信じたことに過失もないときは、AはDに自らの権利を主張できない。

第113条1、代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2,追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

C(善意・無過失)がD(善意・無過失)にマンションを転売した。
この場合、B(無権代理)C(善意・無過失)間の契約は無効であるから、C,D間の契約は無効。よって、A(所有者)はD(善意・無過失)に対して、権利を主張できる。

よってこの選択肢は間違い。 ❌ です。

 

4 売買契約後にBに代理権がなかったことを知ったCが、Aに対し「7日以内に追認するかどうかを確答して欲しい」旨の催告をしたが、Aがその契約の内容を判断する能力があるにもかかわらず、その期間内に確答しなかったときは、その契約を追認したものとみなされる。

 

第114条【無権代理の相手方の催告権】 前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。 この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

この条文から追認したものとみなす。ではなく  追認を拒絶したものとみなす。

です。   ❌

 

この問題の答えは  2  です。

 

 

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